株レポート

対ロシア経済制裁の影響について

本当に残念な話なんですが、ウクライナのドンパチが本格的な戦闘に発展してしまいました。
戦況がこれからどうなっていくのかは全くわかりません。

経済制裁も次々と発表されているんですが、とうとう一般投資家にも影響が及び始めました。

先日の記事【 ウクライナ情勢とロシア市場 】で、銘柄コード 1324 ロシア株式指数・RTS連動型上場投信(ETF) についてお話したばかりですが、その際、2月24日の下げについて、そのままロシア市場で売り注文となって反映された、という内容を書きました。
この点、これから説明する内容に鑑みて、そうでなかった可能性がありますので(事実関係は不明です)、お含みおきくださいますようお願いいたします。

今日はこのETFについてお知らせしておこうと思います。

事実関係についての詳細な発表はありませんが、ETFを運用する野村アセット・マネジメントから2月25日に出された発表には、ロシア株式の取引が困難であるとの記載がありました。

具体的には、運用を担当する野村アセットマネジメントから

①ロシア株式指数・RTS連動型上場投信(ETF)の新規設定と解約を2月24日から中止する。
②東証で売買されるこのETFと基準価格(ETFの実質的な価値)との間に乖離が生じる

という発表が2月25日付でなされたわけです。

 

 

どういうことか説明しますね。

①については投資家と証券会社、もしくは投資家と運用会社(野村アセットマネジメント)の二者間では関係ありません。
ここで新規設定と解約と書いてあるのは、証券会社や機関投資家(金融機関)と運用会社である野村アセットマネジメントとの関係です。
ただし後ほど説明するように、この設定と解約を一時中止することによって、ETFとロシア株指数(RTS)とがうまく連動しなくなる可能性が生まれます。

②について
ETF自体は東証でこれまで通り売買が可能です。
ただし、①の措置によって、東証で売買されるETFの値段と、ETF本体の価値(基準価格)が一致しなくなるということです。
加えてRTS指数との連動性が低くなる可能性があります。

例をあげて説明しますね。

まずETFの作り方についてです。

日経225に連動するETFであれば、まず証券会社と機関投資家が225銘柄を市場で買い付けしてひとからげにします。そのあとひとからげにしたこの束を運用会社に渡して、運用会社が引き換えに証券を作って渡すわけですね。
この証券が市場で売買されて値段がつくわけです。
当然、証券の価値(基準価格)と、受益証券の値段(基準価格。純資産額➗受益証券の枚数ですよね。)は一致するはずですね。
リアルタイムで連動させるしくみはわかりません。これはブラックボックスです。

今回のロシア株式指数・RTS連動型上場投信であれば、証券会社(野村證券ほか)と機関投資家が、「RTS指数を構成するロシア市場の43銘柄」を「RTS指数に連動する比率で」ロシアで買ってきて、1単位ごとに束にして野村アセットマネジメントに渡すわけです。
野村アセットマネジメントは引き換えに束の数だけ証券を渡します。これが市場に放出されて売買されるんですね。
市場でのETFの買い注文が多くなれば証券が足りなくなりますから、証券を増やすためにまた野村證券らはロシア市場で構成銘柄を集めて束にしてくわけです。

売りの場合は逆です。こんどは売りが出たら野村アセットマネジメントに証券を持ち込んで、構成43銘柄の束を受け取ります。これが①でいう解約のことです。
野村證券らはその構成43銘柄の束をばらしてロシア市場で売却するわけです。

ところがロシア市場でどうやら売買できなくなる可能性が出てきたというのが今回の措置の原因です。

で、さらなる問題はこれからなんです。
ロシアで思うように売買できなくなれば、連動するようにロシアから株を集めてくることができません(買えない)し、ロシアで束を放出することもできません。(売れない)
そうすると証券の価値(基準価格)と指数との連動性も低下しますよね。

連動性が低下するということは、東証でのETF売買価格が、実際のロシアRTSの動きから離れて独り歩きし出すということです。

ちなみに、2月25日時点でのETF「ロシア株式指数・RTS連動型上場投信」の実際のひと束あたりの実質価値(基準価格)は84.21円、市場での売買価格は139.0円でした。
当然、実質価値(基準価格)が本来のETFの価格であるはずですから、理論的に東証の売買価格のほうからETFの実質価値(基準価格)近づいていくか、一致するはずです。

すでに25日時点で139.0−84.21=54.79円の乖離が生まれているわけです。
RTSが今のまま一定としたら、市場売買価格は84.21円まで下がる、ということになります。

連休に入りましたし、戦況がどうなるかは不透明。
制裁措置がどこまで広がり、どのように影響が広がるかも見当がつきません。

最後に、RTS指数と、銘柄コード 1324 ロシア株式指数・RTS連動型上場投信の動きを並べてみます。
(Bloomberg Web サイトで検索しました https://www.bloomberg.co.jp )
左がRTS、右がETFです。

すでに連動性が低下しています。

RTS指数

ロシア株式指数・RTS連動型上場投信

 

動きそのものは一致していますが、ETFの下げ率はRTS指数と一致していません。基準価格と乖離している分ですね。

当面、ロシアの金融市場についてウオッチを続けます。

ちなみに本日2月26日の段階で、モスクワ取引所のWebサイトはアクセスできない(アクセスしてもタイムアウトで表示されない)状態が続いています。

では、今日はこれで終わります。

 

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