株指南

投資のテクニック ⑥ 板気配の読み方

今日は板気配が示している意味についてお話しようと思います。

板気配とはどんなものかについては過去記事【板気配】で一度触れているのですが、板気配をどう解釈したらいいのかという点を説明していなかったので、今日はこの点を検討していきたいと思います。

まず板気配画面を見てみましょう。
今日もお世話になっている吉野家さんの例で。

 

引け後の板です。

真ん中の気配値の右側が買い板、左側が売り板ですね。
各気配値に売り指値注文、買い指値注文がそれぞれ何株ずつ入っているかをあらわしています。
この注文が全体に多ければ「板が厚い」といいます。少なければ「板が薄い」といいます。
買いが多く売りが少ない場合は「買い板が厚い」「強い板」「売り板が薄い」、売りが多く買いが少ない場合は「売り板が厚い」「買い板が薄い」と表現します。

この日の出来高は約44万株、売買代金は約10億8,000万円でした。
板に残っている300株とか700株とか、ちょっと少ないんじゃないかと感じるかもしれませんが、まあこんなもんです。

まずどんな時にどんな使い方をするかですが、

この状態であなたが吉野家HDを1,000株購入するとしましょう。
(1,000株買うと「半期ごと」に500円のサービス券が12枚ずつもらえます‼‼ 100株でも4枚ずつもらえます‼)

成行で注文を出すと、まず2,455円の300株にぶつかり、残り700株がその上の2,456円で買えることになります。
確実に買いたければ成行ですが、確実に買いたいけど思わぬ高い値段になることを避けたい、ということであれば、2,456円の買い指値になります。
2,456円までに合計4,500株の売り注文があるわけですから、2,456円までであれば成行でも指値でも結果は同じになります。

2,454円の現在値以下で確実に買いたいということであれば、2,454円の注文が売り買いともにありませんから、2,454円で買い指値注文を出します。
2,454円の気配値が表示されてその右にあなたの注文1,000株が出てきます。この状態なら確実に買えるでしょう。

さらに下で待つのなら、2,450円に3,000株の注文がありますから、その上の2,451円で買い指値しておけば高い確率で買えると思います。
このように、狙っていた値段に近づいてきたので今日買いたい、という場合は、大きな数量の注文のひとつ上で買い指値するのが定石です。

売る場合はこの全く逆をすればいいわけです。

さて、使い方はわかったとして、この板をどう解釈するかですね。
現在値は23円高の2,454円。これを踏まえて考えます。

結論から言うと、上がってあと5円くらい、下がる場合は10円くらい、でしょう。

売り板を見てみると
2,460円に14,800株、2,461円に11,700株、合計26,500株あって、そこまでにも多くの売り注文がありますから、それを上回る買い注文が入らないとそれ以上上には行きません。
出来高は44万株ですからこの出来高から考えても2,461円まで到達するのは無理でしょう。よほど材料がない限りは。
利益が出ているのであれば一旦売却して様子を見るタイミングです。

売り板に比べて買い板が薄いですね。
私が考える原因としては、「売り注文が多い上に23円高しているので、様子見で買い注文自体が少ない。」と考えます。

売り買いどちらかの板が厚く、もう一方が薄い場合は、薄い方に傾く傾向があります。
この場合も売り板のほうが買い板よりも多いですから、このあとの展開としては、「ここで上げ止まり、やや下落」と読みとれます。

仮に板気配がこの逆で、買い板が厚く売り板が薄ければ、買いたいと思っている人が多く、売りたいと思っている人はなるべく高く売ろうと様子を見ている、と考えます。
注文を出している人の心理状態がわかるわけです。

さて、このようにして板気配を見ていくわけですが、注意すべき点が4つあります。順に説明しますね。

①基本的に短期売買で活用すべきで、中長期投資の場合はあまり使わないほうがいい。

これはなぜかというと、デイトレのように短期売買ならばこの板気配は必須ですが、中長期投資を狙っている人がこの板気配を見だすと、その動きに迷わされて買う決心がつかないからなんです。
もちろん1円でも安く買いたいですから、板気配を参考にして指値を決めるのはいいです。ただずっと板気配を見続けるのは避けたほうが無難です。
買えない、売れない、ままであっという間に一日が終わります。

また板気配を見る銘柄はある程度絞って、狙っている銘柄に限ったほうがいいですね。
見慣れていきますから、その銘柄の動きのクセがわかるようになります。

②急騰、急落の場合は板気配の読み方が逆転することがある。

急騰して勢いがあるとき、下げが止まらないときは、板気配の解釈のしかたが逆になることがあります。

急騰しているときは下で買い指値しても買える見込みゼロですから、みんな成行か現在値の上で指値してきます。
こういうときは買い板も大したことはないし、売り板に大量の指値注文があってもあっという間に消化します。大きな買い注文が入って売り注文を飲み込んでしまうのはもちろんですが、売り指値を引っ込めてもっと上の値段に変更したりすることも原因です。

また下げが止まらないときも同様で、大量の買い指値が入っていて「強い板」になっていても、いともあっさり買い注文はなくなります。
その株を持っている人はなんとか下げ止まってくれないか、これくらい買い注文があるからもう下がらないだろうと思うのですが、あっけなくその堤防は決壊するんですよ。

ですので下げが止まらないときは注意してください。下げ局面ではヘタに買いに行くと大ケガしますよ。

③VWAPを利用したシステム売買やアルゴリズム取引の指値が自動で入ってくる。

多かれ少なかれどんな銘柄でもシステム売買やアルゴリズムでプログラムされた注文が入ってきます。
前回記事(【投資のテクニック⑤ 加重平均とVWAP】)でご説明したVWAPを使っての売買もその一つです。
最近はAIを使っているので、ニュースに反応して自動的に売りを出したり買いを出したりしますから、ますますわかりづらくなっています。

ただそのアルゴリズムも人間が作ったものですから、その銘柄の特性を考えれば先読みも可能になってくると思います。
ただし先ほども書いたように、そのどういう時にどう動いたのかという銘柄の動きのクセに慣れておかないと先読みもできないですね。

④大型株は板読みに不向き。

これは実際見ていただくとわかると思いますが、注文の数が半端なく多くて、増えたり減ったり板の変化が激しいんですよ。
そこにアルゴリズムの注文が入ってきますからなかなかその先の展開が読めないです。
板を見ながらの大型株売買はオススメしません。

この4つは必ず覚えてくださいね。

さて最後に、この板気配の一番役に立つの利用法をご紹介しますね。
それは寄り付き前、8:30頃から寄付きまでの板を見ることです。

前日のニューヨーク市場や、シカゴ市場での日経平均先物価格をみれば、日経平均が朝どんなスタートを切るのかは容易に予想できます。
(これは次回記事で説明します)
その流れに沿って、その日どのあたりで寄り付いてくるか、買いが優勢なのか売りが優勢なのか、その日どんな動きをしそうなのかが予想できるんですよ。
もちろん上に書いたとおりある程度銘柄は絞って頻繁に見るようにしてくださいね。

8:30ごろの板気配と8:55ごろの寄付き直前の板気配とは大きく違います。
この30分間の動きを見ると、売り方と買い方の心理状態や駆け引きがよくわかるんですよ。もちろんアルゴリズムによる注文も入り込んでいますが。
またその銘柄の同業種の他銘柄の動向はどうか、と想像を働かせることもできますね。

さて、いかがですか?
板気配をどう読むか、読むようになれるかは慣れ以外にありません。
しかし慣れてくるとその日の傾向や、今日はいつもと違う、ということもわかってきますから、ぜひ活用していただきたいと思います。

では。今日はこれで終わりましょう。

 

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