株指南

テンバガー銘柄の落とし穴

まだあるんだなあ… こういう事件…
と考えさせられる出来事がありました。

まあ、これからお話する会社の株価をご覧あれ。

 

有名な話ではあるのですが、ちょっと今日はこの事件を題材に。

業種別指数のシリーズの第1回は医薬品でしたね。(【 銘柄コードと業種 ② 医薬品 】
あれを書いたときはこの事件のことは念頭になかったんですが、あの記事の中で、薬品株(バイオ関連株)は連想で買われることが多い、という内容のことを書きました。

株が急騰するときというのは何がしかの理由が存在します。「材料」ってやつですね。
投資家の多くはその材料の事実関係を詳しく知っているわけでないし、別に調べる必要もない。
買ってる他の投資家がそう言ってるんだからそうなんですよ。上がればいいし、上がるから買うわけです。

ところがそれが後になって「そんな事実なんてありませんよ」という事態になって株価は急落、買った投資家はババをつかむ結果になるんですね。
よくある話です。
別に企業は何も悪くないです。買った方々の責任です。
今は企業が適時情報を開示してくれますので市場のウワサがウソかマコトかというのはおおかた見当はつきますし、それを見て投資家が飛びつくわけですからね。

でもその開示内容自体がウソだったらこれはどうにもなりません。
今回の事件はそんな内容です。

順にお話していきましょう。

2020年はコロナが流行りだして世界中が大騒ぎの年でした。
ワクチン作るのに何年もかかるということで、日本でも地方で患者が出るとその患者と家族までが町を出て引っ越さなきゃいけなくなった、なんて話が現実としてありました。

そんな中で2020年4月にテラ社はCENEGENICS JAPAN(以下、セネ社といいます)と業務提携を結んで「新型コロナに有効な新薬開発事業を開始した」と発表します。
株価は大暴騰、それが冒頭のチャートです。見事なテンバガーですね。

翌月、テラ社はメキシコで臨床研究が開始されたと発表します。
しかしどうもアヤシイ…

実はテラ社は2018年に、増資に絡んでトラブルがあって2019年には証券取引等監視委員会から課徴金納付命令の勧告を受けています。
証券取引等監視委員会が動くというのはかなり悪質なケースなわけですが…

アヤシイ… アヤシすぎる… 週刊誌が嗅ぎつけて、メキシコの臨床実験なんぞしてないぞ、とすっぱ抜くわけです。

いやいやそんなことはない、臨床試験は承認されている、とセネ社から聞いている。
セネ社の社長がメキシコの州知事と共同会見をして、セネ社の子会社が申請を行った。

と発表しました。
さらにこのセネ社の子会社の株をセネ社から買い取って自分の子会社にする契約を結んだと発表します。

ところがところが…
このメキシコの子会社というのが実は存在していない、州政府の薬事申請自体もそんな制度はなかった、ということが明るみに出ます。
オマケにテラ社がセネ社に対して行った36億の第三者割当増資も100万しか払い込まれず…

結局テラ社の言っていることが二転三転、提携先のセネ社は破産。
そして2022年2月25日、この一連の不正に関わったカドでセネ社の前社長ら3人が逮捕されたわけです。
また同日、新型コロナ新薬開発の情報を得てインサイダー取引をしたとして横浜の建設会社が起訴されております。

事件のあらましはこんなかんじなんですけども、会社がアレしたコレした、倒産しそうだ、という話はこの際どうでもいいわけです。自業自得ですので。
(ちなみにテラ社は8期連続赤字。2021年12月期の売上はたった1億600万円でした。)
問題は投資家がそれによって莫大な損を被ったということですね。
テラ社が公表し続けた60件の適時開示のうち24件が事実と異なっていたそうです。

テラ社は自らは被害者であるかのようにたち振る舞っていますが… どうも私にはそうは思えませんね。

今日お伝えしたかったのは「結局投資家が被害を被る」というお話なんですね。

今回のテラ社の件だけでなくて、過去にも粉飾決算で投資家が被害を被った事件はたくさんあります。
ライブドア事件もそうです。1兆円の時価総額があっという間に63億まで減りました。つまり株所有者の資産が1兆円近く吹き飛んだということです。
バブルがはじけたあと、株価下落で被った損を隠したオリンパスとか、山一證券もそうですね。東芝もそうだし、ビックカメラも粉飾決算でした。

長期間保有して財産が増えるテンバガーなら良いですが、短期一発勝負のテンバガーにはこうした落とし穴が常に潜んでいます。
株価が急騰し始めたら、材料がホンモノかどうか、本当に業績がそれだけ良くなるのか、そんなこと調べてる間に株はどんどん上がっていきますからね。

どうぞご注意を。

では、今日はこれで終わります。

 

-株指南
-, , , ,