株指南

銘柄コードと業種 ② 医薬品

銘柄コード順にやっていこうかなあ… と思ったんですけど、思いつきで医薬品から始めることにしました。
ちょっと扱いづらい業種なんですけどね。

これから業種別順にどの業種がどういう習性を持っているのかをシリーズで考えていくわけですが、それぞれの業種について、

①指数構成銘柄とテーマ性
②過去データ
③日経平均との比較
④今後の方向性

という順で進めていこうと思います。
ではさっそく。

①指数構成銘柄とテーマ性

指数構成銘柄は73銘柄で、
1部−39銘柄  2部−2銘柄  JASDAQ(2市場計)−9銘柄  マザーズ−23銘柄  という構成になっています。

最初に医薬品を選んだのは、コロナで医薬品株がどう動いたのか、その顛末はどうなのか、ということを調べたかったんですね。
医薬品株というのは銘柄それぞれ動きが本来バラバラなんですね。
薬を作っているというのはどこも同じなんですが、どんな病気に対する薬を作るのかというのがそれぞれ全く違うので。

1980年代後半の株式市場では抗がん剤というのが一つのテーマでした。
持田製薬と大日本製薬(現在の大日本住友製薬)に資金が集まりましたね。
大日本製薬のことを「マルピー」(会社のロゴです。○の中にP。)とよんでいて、営業場はいつもマルピーマルピーという言葉が飛び交っていました。
結構息の長い相場でしたよ。

当時は野村総合研究所(野村證券の調査機関)が企業に張り付いて詳細に薬の効果とか、臨床実験スケジュールとかを入手して、企業情報を逐一社内で公表してくれました。
ついには抗がん剤マニアの営業マンまであらわれましたね。支店内でその人に聞けばなんでも分かるわけです。
しかし株が買われていたのはまだ「効果があるのかないのか」という段階で、そこから臨床実験とか承認とかのプロセスを経ると収益化するのははるか先だし、効果は間違いなさそうでしたけれども、夢を買うようなものでしたね。

それでどういうことがおきるかというと、毎日持田やマルピーばかりを話題にするのも飽きるので(それはどの証券会社も同じだったと思うんですが)、ついには他の薬品株やまで連想で買われるわけです。
大テーマの抗がん剤とは関係ないんですよ。
関係ないんですが「関係あるらしい」というウワサだけで、あっちの銘柄、こっちの銘柄、というふうに市場はさまざまな銘柄を食い散らかしてました。

新興株市場が食い荒らされるのとはちょっと違いますが、薬品株、バイオ関連株はとかくそういった側面があります。

では製薬会社を評価する際にどこを見たらいいんでしょうか。

一つは収益の柱となる薬を持っているかどうかです。特に特許を持っていれば強いです。
それと薬の開発力と開発の進み具合。

この二つです。
最初に気をつけなければいけないのは、特許が切れると市場の評価は厳しくなる、という点です。
特許が切れるタイミングで次の新薬が出てくればいいんですが、そうでもないと投資家の資金は集まらないですね。
収益の柱があるかどうか、これはポイントです。

二つめとしては、一つめと関連してその企業の新薬開発力です。
開発費も桁違いにかかりますからね。社運をかけてでも新薬開発に取り組まないといけないんですが、そのような開発が進んでいるかどうかが評価の分かれ目だと思います。
ちなみに世界的な製薬会社は開発費が1兆円を超えるといいますが、日本では武田薬品が最多なんですが約4,000億円にとどまっています。

参考までに、自前で新薬の開発に取り組む方法から、世界的な大手製薬会社などと提携して国内販売していく方法に転換しつつある製薬会社もあります。
中外製薬などがそれですが、収益化が早いですから、今後はこうした製薬会社が評価されていくと思います。

 

②過去データ

コロナショック前の2019年から見てみましょう。
(日本取引所グループ Webサイト「リアルタイム株価指数値一覧」 https://www.jpx.co.jp/markets/indices/realvalues/01.html より抜粋しました。)

 

コロナショックの後指数は高値を回復するのですが、その後は下げ基調です。
先ほど書いたように、指数採用73銘柄の中でも収益の柱を持っている企業、新薬の開発が収益に寄与することがはっきり予想される企業と、そうでない企業がはっきり分かれてしまっていて、トータルで指数としては一貫して下げ基調になっています。

参考までに、
協和キリン(4151)、大日本住友(4506)、アステラス(4503)、塩野義(4507) の4銘柄の株価を比較してみましょう。
(STIOCK-CHART.NET 株式チャート集 Webサイト 「全33業種別指数と構成銘柄のチャート一覧」 https://www.stock-life.net/industry/to_medicine.html より抜粋しました。)

 

協和キリンと大日本住友は一貫して下げているのに対し、アステラスと塩野義は高値を取り返しに行っているのがおわかりいただけるでしょうか。
指数構成73銘柄を見てみるとこのように完全に二極化しているのがわかります。
また指数構成73銘柄のうち、23銘柄が採用されているマザーズ市場が昨年暮れから急落していることも医薬品指数を押し下げている要因となっています。

 

③日経平均との比較

こちらをご覧ください。過去6ヶ月のデータで計測した日経平均と医薬品指数との比較です。
(株マップ.comWebサイト 「業種別指数ランキング」 https://jp.kabumap.com/servlets/kabumap/Action?SRC=marketIndustry/base&KEEP=ON より抜粋しました。)

ともに2021年8月25日を100として比較表示されています

 

②の過去データでお話した内容がそのまま現れていますね。
マザーズ市場が回復してくれば日経平均との乖離は多少縮小すると思いますが、株価の動きが二極化している状況では、指数全体としての大きな上昇はないと思います。

 

④今後の方向性

2022年2月25日、塩野義製薬が国内企業では初めてコロナの飲み薬の承認申請を行った、と発表されました。
国は特別承認するとの情報もあり、業績への寄与も見込めることから相当な評価を受けるものと思います。

かと言って他社が追随するとも思えませんしね…
塩野義が上がるからこちらの銘柄も…  ということにならないのがこの医薬品株なんですよ。

いずれにしても業種全体としては下げ続けており、日経平均からの出遅れ、他業種からの出遅れ、という視点で資金を向けるのは意味がなさそうです。

この業種については個別ニュースを逃さないようにアンテナを張ることが一番ですね。

医薬品部門についてはこれで終わります。

では。

 

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