株指南

銘柄コードと業種 ③ 銀行業

ここのところ東証1部の出来高上位、それもトップの常連に三菱UFJ銀行が顔を出しています。

三菱UFJ、みずほFG、三井住友FGといったメガバンクは毎日の出来高上位ランキングの常連なんですが、なんかこう… ジミですよね。
正直なところ私もあまり得意ではありません。

出来高がものすごい割には値動きがそんなにあるわけじゃないし、たしかに一日の中では上下動いてはいるけど、1ヶ月、3ヶ月のサイクルでみてもほとんど値段は変わっていないんですよね。
一年に2、3回くらいは上がることはあるんですが、そんなもの待つより他の株買ったほうがよっぽど資金効率は良いです。

そもそもなんで銀行株がいいの? って考えても、製造業やサービス業と違って新製品開発することもないし、イノベーションが期待できないから材料もない。
まあせいぜいシステム障害でお金がおろせなくなった、くらいのマイナスネタくらいのしかないですわな。

値段が上がらないのに出来高がある、っていうワケを私なりに考えると、証券会社ディーラーが好んで買っているんじゃないかなあ… と。
証券会社の自己売買部門(証券会社が自分のお金で売買して儲ける部門)は手数料がかかりませんから、1円でも上がれば利益になるんですね。
上がりもしないけど、下がる心配もない。大きく上がる必要もないので、限られた変動幅で上下を繰り返す銀行株は一番いいんですよ。
しかも出来高が大きいですから毎日せっせと稼ぐことができる…
私がディーラーなら銀行株は売買対象として最適です。

で、ですね、実はここのところこの銀行株が上がってるんですよ。
業種別でみても数少ない「勝ち組」の一つです。

前置き長くなりましたが、銀行株の傾向をみていきましょう。

①指数構成銘柄とテーマ性
②過去データ
③日経平均との比較
④今後の方向性

の順でしたね。

 

①指数構成銘柄とテーマ性

指数構成銘柄は86銘柄。福証(福岡証券取引所)単独上場の4銘柄のほかは全て東証1部です。

今回の銀行株上昇の最大の要因は「金利上昇」です。
株式市場の常識では金利が下がると銀行の収益が減って銀行株は下がる、逆に上がると銀行の収益が増えて銀行株が上がる、とされています。

金利が上がると、銀行の貸出金利と調達金利の差ー長期金利と短期金利の差ーが広まって、いわゆる「利ざや」が大きくなるので銀行の収益が良くなる、というメカニズムなんですね。実際そのとおりなんでしょう。

じゃあこのメカニズムで考えると異次元の金融緩和でゼロ金利だったときは銀行収益を圧迫したんじゃないのか、ということになるんですけど、実はこの間、特にメガバンクは収益を上げ続けてきました。
理由はというと、投資信託や保険などの販売手数料やM&Aの仲介とかトレーディング上がってくる収益が業績の底上げをしているからなんですね。
そこにきて最近のアメリカ金利の上昇ですから、銀行業界にとってはものすごく追い風になる、というのが最近の株価上昇につながっています。

投資家がこの収益構造の変化をどこまで観察して評価してきたのは定かでないですが、金利上昇局面で利ざやが拡大するメカニズムは変わりませんので、業種全体として「金利連動株」としてとらえればよいでしょう。

 

②過去データ

順調です。コロナのショック安、ウクライナ情勢での下げは致し方ないにしても、アメリカの金利上昇基調が当面変化する兆しはないですから、この傾向は継続していくと考えられます。
(データは日本取引所グループ Webサイト「リアルタイム株価指数値一覧」 https://www.jpx.co.jp/markets/indices/realvalues/index.htmlより抜粋しました。)

 

メガバンク2行を含む6行の株価動向を見てみましょう。
(STIOCK-CHART.NET 株式チャート集 Webサイト 「全33業種別指数と構成銘柄のチャート一覧」 https://www.stock-life.net/industry/to_medicine.html より抜粋しました。)

変動幅に多少のばらつきはありますが、チャートの天井と谷はほぼ一致していて上昇傾向です。
他の採用銘柄もほぼ同様の動きをしていますので、指数の動き≒個別銘柄の動き、と考えて良いでしょう。

 

③日経平均との比較

直近6ヶ月の動きを見てみましょう。
(株マップ.comWebサイト 「業種別指数ランキング」 https://jp.kabumap.com/servlets/kabumap/Action?SRC=marketIndustry/base&KEEP=ON より抜粋しました。)

ともに2021年8月25日を100として比較表示されています。

一目瞭然ですね。
上で書いてきたことがそのままこの比較にあらわれています。

 

最近は「日経平均が上がるときは一緒に上がる」「日経平均が下がったときには下がらない」という動きになっています。

 

④今後の方向性

「下値不安がない」というのが最大の強みです。
アメリカの金利動向に変化はありませんし、金利連動株という側面で引き続き資金は向かうでしょう。

注目しておきたいのはその業績と割安感です。
メガバンク3行を例にとると、利益が拡大することに加えて、配当利回りが4%前後(株価動向によりますがさらに上がる可能性も)、PERが10倍以下(三菱UFJ は連結で6.40倍)という、「超お値打ち」な状態になっています。
したがってこれからであれば市場全体の下落局面や銘柄の調整場面で下値を狙う、というスタンスで良いと思いますね。

最後に少し注意点を。
これまで書いてきたように、現在銀行株が買われているのは業績の裏付けの上に金利連動株としての人気が重なっているためなのですが、いくら銀行株全体ががっているからといって銀行株なら何でも良いと言い訳にはいきません。

こういうときに犯しがちなミスは、メガバンクなどのメジャーな銘柄をさけて二番手、三番手を買いにいってしまうことです。
それはそれで投資手法としては間違っていないし上がれば結果オーライなのですが、過去経験上、思うようなパフォーマンスが得られないことがままあります。

メガバンクは相変わらず売買高が多いのに、地銀株は投資家の注目が集まらず出来高が細っていく危険は大いにあります。
まずは業績の見通しやPER、配当利回りなどをしっかり確認しましょう。

さて、アメリカの金利動向をにらみながら、これからも銀行株に注目していきましょう。

では、銀行業についてはこれで終わります。

 

-株指南
-, , , ,