株指南

株主総会(上)

前の記事で書いてあった総会屋ってなんのことですか?

ん〜 あんまり触れたくはないけど、一応説明しておきましょうか。
先日の記事【 IPO銘柄は儲かるのか? ① 】でちょっと触れたんですが、長くなりそうだったのでやめました。

とりあえずサラリとお話しましょう。
そんなこともあるのね、程度で聞き流してください。

総会屋というのは上場企業の株主総会に出席して、株主総会を円滑に進めて見返りに金品を要求したり、それがうまくいかないと株主総会を妨害したりする方々です。
私が証券会社にいた頃がピークでしたかね。上場企業の大半が3月決算ですから、株主総会が集中する5月下旬から6月にかけては、毎日のようにこれがニュースになっていました。
総会屋のために株主総会が何時間にも及ぶことも珍しくありませんでしたね。

この総会屋に絡む事件は数しれず、旧第一勧業銀行(現在のみずほ銀行)の元頭取が自殺したり、山一證券が倒産に追い込まれたりしました。
バブルがはじけて経済が低迷した1990年代というのは総会屋に絡む事件が次々明るみに出たんですよ。
今ほとんど活動している総会屋はいないようですが、弁護士事務所のWebサイトを見ていると総会屋対策という言葉も並んでいますから、まだ完全には消えていないんでしょうかね。

株主総会は上場会社の決算期末からおおよそ2ヶ月〜3ヶ月後に行われます。決算発表のあとです。
上場会社にあっては、一番偉いのは社長でも会長でもなく株主様なんですね。株主様は神様です。株主総会は会社の最高意思決定機関なんですよ。

株主総会では業績の報告や利益をどのように株主に配分するか(これが配当金です)、役員改選など、会社の経営に関わる重大な決定事項を議案として株主に諮ります。
ですから会社としてはその議案にすんなり賛成してもらって、株主総会を円滑に進めたい、さっさと終わらせたいわけです。
が…不祥事を起こした会社などは総会屋の格好のターゲットになります。責任追及されますしね。

それで総会屋の方々がこの株主総会でどんなことをするかというのをかいつまんで説明すると、まず企業の味方として立ち回る与党総会屋と、株主総会の妨害を目的にする野党総会屋に分かれます。

・与党総会屋は万歳屋とも呼ばれ、議事進行中企業側の発言に対して「異議なし!」「賛成!」などと叫んで議事進行を円滑にするよう協力します。
また企業側の見方として議事進行をリードしたり、ときには反対派の発言を封じ込めたりします。
・野党総会屋は企業の不祥事や弱点をついて質問を繰り返したり経営陣を攻撃します。

与党総会屋は協力の見返りとして企業側に金品を要求し、野党総会屋は妨害をちらつかせて金品を要求するわけです。
ちなみにこうした行為は会社法で禁じられていて、利益供与した企業の役員は3年以下の懲役・300万円以下の罰金が課されます。総会屋も罰せられます。
1990年代に次々と明るみに出たのはこうした総会屋の利益供与事件でした。

私が証券会社にいた頃はこの総会屋が1,000人ほどいたそうです。今は20人ほどでほとんど活動していないとか。
しかし株主総会に近づくと議事進行妨害に備えて株主総会のリハーサルを入念に行ったりするのは、何らかの形でまだ残っているんだろうかと考えさせられます。

ちなみに、近年なお株主総会シーズンになると「株主総会特別警戒対策室」なるものが警察本部に置かれているようです。

それでこの記事を書きながらふと考えたのですが…

最近は決算発表で企業の経営内容も透明化されましたし、特に上場企業はそのガバナンスが問われ、コンプライアンスも要求されますから、株主総会で「されては困る質問」というのはほとんどないと思うんですよ。
でも総会当日、社員や関係者がサクラとなって質問したりする企業もまだあるようですし(昔はあたりまえでした)、法律事務所も相談に乗っているようですから、創業まもない上場会社などは不安なんでしょうね。

そもそも不祥事起こした会社では株主から突き上げ食らうのはあたりまえですよね。
それで株価が下がったらそれこそ経営陣の責任問題ですからね。総会屋じゃなくたって怒ります。
そんなときに小細工して株主総会を無難に乗り切ろうとするなら、それはまさしく株主軽視じゃなかろうか…

左様に思う次第であります。

さて、これくらいにしましょうか。
次回は楽しいお話にします。

では。

 

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