株指南

信用取引ってなんだ? ⑦ 基本のしくみ−追証編 その弐

さて、今日は信用取引についての第7回、追証についての後半部分のお話です。

①追証が発生するしくみ
②追証が発生したら
③やってはいけないこと
④株価への影響

前回記事では①と②、追証とは何か、追証が発生するメカニズム、そして追証が発生した場合の対処方法についてお話ししました。
今日はこの後半部分、③と④についてお話ししていきますね。
もしわからなくなったら前回記事【 信用取引ってなんだ? ⑥ 基本のしくみ−追証編 その壱 】を読み返してみてください。

では始めましょう。

③やってはいけないこと

◯親子どんぶり

これまで何度か「親子どんぶり厳禁」と書いてきました。
二階建てともいいますが、どういうことかというと、保証金として差し入れている代用有価証券(現物株)の銘柄と、買建てする銘柄を一緒にしてはいけない、という鉄則です。

少し話がそれますが
これまで維持率をご説明してきた中では、「保証金は現金」としてお話してきました。
でも信用取引をされる方の多くは持っている現物株を担保にして(代用有価証券として)信用取引をされています。
証券会社によっては信用取引にかかる保証金は現金のみとしたり、代用有価証券を認める場合でも一部は現金とすることもありますので、最低維持率とともによく確認してくださいね。

話を戻しましょう。

親子どんぶりの場合を具体的に。
いまあなたが持っている1,250円の株1,000株を代用有価証券として差し入れ、買建てしたとします。

掛け目80%ですから、現金換算すると
1,250円 ✕ 1,000株 ✕ 80% = 1,000,000円

これが保証金になりますから、買付けできる金額は
100万円 ➗ 30% = 300万円
ですね

300万円で現在株価が1,250円ですから、2,400株購入できました。

では… 株価が1,250円から100円下がって1,150円になったとしましょう。

代用有価証券の評価額も下がりますから
1,150円✕1,000株✕80%=92万円

評価損は
100円(値下がり) ✕ 2,400株 = 24万円

ここから維持率を計算すると

(92万円−24万円)➗ 300万円 ✕ 100 = 22.7%

もうギリギリまで来ているわけです。証券会社によっては即刻追証です。
親子どんぶりをやると評価損は膨らみ、保証金も同時に減っていくわけです。
ダメージが大きくなりますから、証券会社もこの親子どんぶりについては二階建て取引として原則禁止しています。

◯代用有価証券の差し入れ

やってはいけないとは言いませんが、保証金の大半を代用有価証券でまかなうのは極力避けたいところです。

この親子どんぶりと同じ理屈なのですが、同じ銘柄でなくても株式市場全体の下落局面では代用有価証券である現物株の株価も下がっていきますから、保証金の額も下がっていきます。追証が発生しやすくなりますね。
先ほど書いたように、証券会社が信用取引にかかる保証金は現金のみとしたり、代用有価証券を認める場合でも一部は現金とするのはこうした理由からなんですね。

ですから代用有価証券を差し入れるにしても、必ず現金の比率を高めて保証金としてください。

④株価への影響

◯買建ての場合

買建てで追証が発生する場面で株価はどのように動くと考えられるでしょうか。

結論から言うと、株価はすぐには戻らず、さらに下がるか調整を続けるケースが多いです。
なぜかというと、その場面ではあなたのお友達、つまり追証が発生した人が多く、同じような行動をとるからです。

急上昇した株が下がってくると、市場では「高値で買った人の追証ライン」を意識します。
追証を払うのもいいですが、投資家心理としては過去の経験から言うと「早めに損切りしたほうがいい」と考えますから、売りが売りを呼ぶ展開になりがちなんですね。

どうなるか…
売りが増えて株価を押さえつけますからなかなか上がらなくなりますね。ジリ貧です。
そうなると追証を払い続けて耐えてきた人でも、最後は我慢できなくなって投げ売りを始めるわけです。実はここが最高の買い場で、売りが増え、大きく突っ込んだ場面(これをセリング・クライマックスといいます)から株価は反転します。
叩き売りした人にとって見れば「どうしてあんな安いところで売ってしまったんだろう…」ということになりますね。
こんなストーリーが考えられます。

「高値で買った人はそろそろ追証ライン」と考えて買い場を待っていた人にとってはまさに絶好の買いチャンスですよね。

◯空売り

空売りの場合はちょっと事情が違います。
空売りで追証が出るケースというのは株価の上昇局面ですから、代用有価証券を差し入れている場合は時価評価が上がっていきます。
普通に考えれば買い建玉の値下がり場面よりは良さそうな気がしますよね。

でも、それを上回る評価損が出ている、という状態が空売りでの追証なんです。
「踏み上がる」という言葉を使いますが、売り方の買い戻しでこんどは「買いが買いを呼ぶ」展開になるわけです。

買い方が追証に追い込まれる場面で空売りをかけて値段を下げる→買い方は投げ売りをしてさらに株価が下がる。
という場面はよくあります。
しかしこれを狙って空売りしたら、セリング・クライマックスで株価が旧反転、慌てて買い戻ししようとしたけれど株価は上がっていくばかり…
なんていうケースですね。
空売りした銘柄の現物株を持っているケースはあまりないでしょうから、現渡しもできませんよね。

後日信用取引での需給関係についてご説明しますが、信用取引では見ておかなくてはいけない指標や数字がいくつかあります。
こうした信用取引の動向も銘柄選びの際に考慮に入れる必要がありますね。

さて追証についてご説明してきましたが、細かい計算方法はともかく、信用取引はそれだけリスクが伴うものだということだけはしっかり踏まえていただきたいと思います。

では、追証についてはこれで終わります。

★本日の証券用語
・セリング・クライマックス :株価の下落局面で、出来高が膨らんで大きく値を下げる状態。投げ売りが終わり、株価は反転して上昇し始めます。

 

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