株指南

信用取引ってなんだ? ⑥ 基本のしくみ−追証編 その壱

追証(おいしょう)ー 追加保証金のことです。

買建て銘柄の株価が大きく下がった、空売り銘柄が急騰してしまった…
建玉の評価損は膨らんでいきますね。

信用取引シリーズの第6回目はこの建玉の評価損が膨らんでしまったケースについて説明します。
ではさっそく説明していきましょう。

①追証が発生するしくみ
②追証が発生したら
③やってはいけないこと
④株価への影響

の順に説明していきますが、長くなりますので2回に分けてご説明しますね。
今日はまず①と②についてです。

①追証が発生するしくみ

買いにせよ売りにせよ、建玉の評価損がある一定以上になると(最低維持率を下回ると)保証金を追加で差し入れなければならなくなります。
「最低維持率(さいていいじりつ)を下回る」とはどういうことか説明すると、

建玉金額に対する(保証金ー評価損)の金額の割合、つまり

(保証金ー評価損)➗ 建玉金額 ✕ 100 = 維持率(%) (実際はもっと複雑な計算をします)

これが一定割合を下回った状態です。一定割合を回復するまで保証金を追加しなければいけません。
この一定割合というのが「最低維持率」で、通常20%です。ただ証券会社によって25%などの定めもありますので、信用取引を開始する前に必ず確認しておきましょう。
ここからは算数ですが、上の計算式を変形すると

建玉金額(円)✕ 20%(最低維持率) + 評価損 = 最低維持率を確保するために必要な保証金額
ですから、

維持率を確保するために必要な保証金額ーすでに差し入れた保証金額 = 追証金額
ということになります。

「『追』加保『証』金」なので追証と呼ぶのですが、昔は「泥棒に『追』い銭」の追証だ、などと言われたものですが…。
(ただでさえ評価損抱えてる状態で、回復するかどうかわからないのにまた資金をつぎ込まなきゃいけない、という意味です。)

さっぱりわからないと思うので。例をあげて説明しましょうか。

◯あなたが保証金30万円を差し入れて1,000円の株を1,000株買ったとします。最低維持率は20%とします。

建玉の金額は、
1,000(円) ✕ 1,000(株) = 1,000,000(円) ですから、
100万円(建玉) ✕ 30%(委託保証金率) = 30万円(委託保証金) となりますね。
裏返せば、あなたは保証金30万円で買える目いっぱいの金額を買付けしたわけです。

◯ここで株価が800円まで下落します。そうすると建玉の時価評価は、

800(円) ✕ 1,000(株) = 800,000(円)
この時点で20万円の評価損です。あなたの現在の維持率は、

(30万円〘差し入れ済み保証金〙ー 20万円〘評価損〙)➗ 100万円(建玉金額)✕100 = 10%
なんと(驚)…

◯20%を回復するためには、

100万円(建玉金額 ) ✕ 20%(最低維持率) + 20万円(評価損) =40万円(現在必要な保証金額)

40万円 ー 30万円(差し入れ済み保証金) = 10万円
これが必要な追証です。

◯追証は…

計算していただくとわかりますが、この場合、900円でぎりぎりセーフ、899円以下になると追証が発生することになりますね。
正確な追証金額はもっと複雑な計算をしますので、上の計算式は目安として考えてください。
また先ほど書いたように、証券会社によってもルールが違いますので(たとえば維持率30%になるまで追証が必要、など。)必ず確認してくださいね。

②追証が発生したら

では追証が発生したらどうしたらいいんでしょうか。
方法は二択です。

・嫌だけどシブシブ追証を払う
・涙をのんで決済する(返済する)→ 損金を払う

残念ながらこれ以外の選択肢はありません。

◯追証を払う

この場合、追証の支払いは翌々営業日11:30までが基本ですが、これも証券会社によって異なります。
翌日入金を求められることが多いですから、「追証が発生したら翌日入金」と覚えておいてください。

証券会社によっては維持率が一定水準を割ると、アプリがアラートでお知らせしてくれる便利な???機能もあるようです。

追証を払った後に株価が上昇すれば維持率は上がってきます。
買値を上回ってくれば追証はそのまま保証金として活用できるわけですから、こんどは「買い余力」ーもっと買えるーが出てきます。
ごく稀ですが…

◯涙をのんで決済する(返済する)

追証はある意味一時凌ぎにしか過ぎません。
後ほど説明しますが、買建てで追証が発生するような場面では、そうおいそれと株価は上昇しません。
1回追証を払ったらそれで終わりではなくて、何度も追証を差し入れなくてはならない場面は多いです。
下げがいつまでも続くと、多額の追証を払ったあげく、最後は耐えきれなくなって叩き売り、損金払ってスッカラカン、という事態になりかねません。

ありがちな話なのですが、株価が下がってくると「追証が発生するかどうか」に気をとられてしまって、往々にしてその株価の方向感や株式市場全体の傾向を見失ってしまいます。
「追証が発生しませんように…」と株価の上昇を祈り続けているうちに株価はさらに下がってしまうものなんです。

株価の傾向を見て下落局面に入ったと思ったら、追証ラインに近づく前に早めに損切りするのがコツです。
そこからまた作戦を立て直せばよいわけですから。

「船が沈みそうになったら飛べ! 祈るな!」

という格言通りですね。
前回記事で信用取引は短期売買が基本と書いたのはこうした側面もあるわけです。

追証とはなにか、追証が発生するメカニズム、追証が発生した場合の対処方法、
おわかりいただけましたでしょうか。

信用取引は少ない資金で利益を得ることができる有利な制度ですが、リスクも非常に大きいです。
まず今日お話したことをしっかりと理解してくださいね。

今日はここで終わります。

次回は
③やってはいけないこと
④株価への影響
についてお話します。

では。

 

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