株指南

買い気配と売り気配

買い気配と売り気配について教えて下さい。

はい、わかりました。ご説明しましょう。

過去記事で「板気配」「指値注文と成行注文」についてお話しましたね。
この三つの言葉を使って説明していきましょう。

・買い気配とは、買い注文が多く、それに対する売り注文が少ないために値段が付けられない状態です。通常は直近の値段(たとえば前日の終値)よりも高い気配値が付きます。
・売り気配とは、売り注文が多く、それに対する買い注文が少ないために値段が付けられない状態です。通常は直近の値段(たとえば前日の終値)よりも安い気配値が付きます。
単に「特別気配」ということもあります。

買い気配と売り気配は全く逆の現象ですので、ここでは買い気配についてだけご説明しますね。

①どのようなときに買い気配になるのか。
②買い気配のときの値段の決まり方。
③実例

の順にお話しします。

まず①、どんなときに買い気配になるのか、ですが

こんなケースです。

本日取引終了後に発表されたA社の今期決算が予想をはるかに上回る大幅増益、来期以降もさらに増益基調が続く見通し。

この速報を見た投資家のBさんは、「明日から上がるに違いないからさっそく買おう」と考えます。
どんなことが起きるでしょうか。

まず大量の買い注文が予想されます。今日の終値は1,000円ちょうど。
明日朝は高く始まるだろうから今日の終値の1,000円は無理にしても、できれば1,030円くらいまでで買いたいとBさんは考えます。
夜遅く、Bさんは1,030円で1,000株の注文を入れました。

翌日、このニュースを見た投資家から買い注文が殺到、取引開始前の板気配は買い100万株に対して売り15万株。気配値はすでに1,040円まで切り上がっています。
そして9:00の取引開始、A社株は1,030円買い気配から始まって、値段がつかないまま気配値は上昇、9:10にようやく1,080円で値段がつきました。
結局BさんはA社株を買うことができず、株価はその後1週間で1,400円まで上昇しました。

こうした例はたくさんあります。
この「値段がつかないまま気配値が上昇」している状態が「買い気配」の状態です。
「現在A社株の値段は1,050円買い気配。」というふうに言います。
街なかの証券会社のボードでは「カ 1050」と表示されます。(売り気配のときは「ウ 1050」)

では②、買い気配のとき、どのようにして値段が決まるのでしょうか。

取引時間中の値段の付き方は過去記事の【指値注文と成行注文の使い分け】でご説明しました。

・指値注文よりも成行注文が優先される
・同じ指値注文なら時間の早い注文が優先される。

でしたね。売り買いの成行注文や指値注文が出る都度取引が成立していきます。これをザラバ方式といいます。

一方、寄付き(始値がつくこと。その値段。)前のときは次の順番で値段を決めます。
板気配を見ているとして①のケースで説明しましょう。

取引前の板気配は、(気配値が10円刻みとして)気配値1,040円のところに買い100万株、1050円のところに15万株、と表示されるはずです。
つまり、
一番上に表示されている成行買い注文 と、1,040円以上の買い指値注文の合計が100万株ある。
成行売り注文と1,050円以下の売り指値注文の合計が15万株ある。
という状態です。

ここから気配値を切り上げていって、買いの注文の株数と売り注文の株数とがバランスする値段で寄付き(始値が付き)ます。
それが1,080円だったんですね。

これが板寄せ方式です。

では③、実例を見ていきましょう。

この記事を書いているのが令和4年2月16日の午前の取引が終了した時点。
昨晩、ウクライナ国境に展開していたロシア軍が撤退を始め、軍事衝突の危険がやわらいだとしてニューヨーク市場は422.676ドルの大幅上昇でした。
ウクライナ情勢が不透明ゆえ買いづらいという雰囲気でしたから、これで朝方から買い注文は膨らむと予想できます。
シカゴの日経平均CMEは27,400円 前日の日経平均が26,865円19銭ですから、500円近く高い値段で始まることが予想されます。

銘柄コード6723 ルネサスエレクトロニクスの値動きをとりあげますね。
前日2月15日の終値は1,391円でした。

⚫8:50 取引開始10分前。

すでに多くの買い注文が入っていて、1,444円あたりで売り買い拮抗し始めました。

 

⚫8:55 取引開始5分前

買い注文が増え、気配値が10円切り上がって1,454円付近まで上昇。

 

⚫8:59 取引開始1分前

売り買いともに注文が増えてきました。
気配値は1,464円に上昇。

 

⚫9:00 東京市場オープン

ルネサス株は「1,421円買い気配」で始まりました。値段はまだ付きません。

 

⚫9:05 取引開始5分後

まだ値段が付きません。「1,451円買い気配」まで切り上がりました。

 

⚫9:06 取引開始6分後

値段が付いて始値は1,457円。その直後、1,447円で売り買いが交錯しています。

これが買い気配になったときの動きです。

 

さてここで買い気配で始まる銘柄の株価の習性をお話ししますね。
買い気配がついたからといってそのまま上がっていくと言えるのかどうか。

買い気配が付くときにはおおよそ次のような傾向があります。

・始値(またはその少しあとに付いた値段)がその日の高値になるケース。
・高く寄付いたあとしばらく売り買いが交錯(もみ合い)してその後高値を上回ってくるケース。
・前の日の終値近くですんなり寄付いたあと、買い気配がついてどんどん上がっていくケース。

二番めと三番めは強い動きと判断していいでしょう。売りをこなして上昇していますから、さらに上の値段が見込めます。
一番目のケースは少ししんどいですね。寄付き値段での出来高が最高潮に達していますから、一旦下がってしまうと、この値段付近での戻り売りが増えてなかなか上がりづらくなります。

さて、おわかりいただけましたか?

「じゃ買い気配が付いて急上昇する前に買えないのか」
これは投資家がいつも夢見ることですよね… 私もいつもそう思います。

でも、それがわかれば苦労しないんですよ…

 

★本日の証券用語
・買い気配 かいけはい:買い注文が多く、それに対する売り注文が少ないために値段が付けられない状態。
・売り気配 うりけはい:売り注文が多く、それに対する買い注文が少ないために値段が付けられない状態。
・もみ合い もみあい:売買が交錯して一進一退の状態
・寄付き よりつき:午前の取引と午後の取引で最初に値段がつくこと。その値段。
・前場 ぜんば:午前の取引のこと
・後場 ごば:午後の取引のこと
・前引け ぜんびけ:前場の終値のこと
・大引け おおびけ:その日の取引終了値。終値といったらこれをさします。
・後場寄り ごばより:午後の取引開始値。午後の始値。
・ザラバ方式 さらばほうしき:取引時間中、売り買いの成行注文や指値注文をその都度成立させる方式。
・板寄せ方式 いたよせほうしき:寄付き、後場寄り、前引け、大引けで使う。出ている注文のすべて(売り買い、成行と指値)がバランスするところで値段を決める方式。

 

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