株指南

IPO銘柄は儲かるのか? ②

企業が上場する理由を教えて下さい。

待ってました。株式講座でもあまりこのことには触れていないので、ご説明しましょう。

最初に一言で結論を言うと、「企業にガッポリお金が入るから」 です。

まあこれだけじゃないんですけど、メインはこれですね。

他にメリットをあげると、

・創業者利潤がもたらされる。
・企業の知名度が上がる
・いろいろな資金調達が可能になる。(投資家やベンチャーキャピタルからお金を募ることができる。)
・社員の福利厚生。(持株会)

というところですね。

それぞれ説明していきましょう。

◯まず最初に「お金ががっぽり入る」、「創業者利益」についてです。

これを説明する前に、まず上場までの道のりをお話ししますね。

株式上場にあたっては、まず幹事証券会社が決まります。主幹事、副幹事、など複数の証券会社が上場に携わります。
幹事証券会社の役割は、上場にあたってのさまざまなお世話をすることですが、最大の役割は「株式の引受」です。

東証の場合、1部、2部、JASDAQ、マザーズそれぞれに上場のための基準があってそれぞれ異なります。
発行済株式数、株主数、資本金などですが、上場時にそれを満たしていないといけないわけです。

ですのでそれを満たすために、上場時に株式を発行して資本金を増やすとともに(増資)、発行した株を投資家に買ってもらって株主数を増やします。

どれだけ株を発行してどれだけ増資するか、どれだけ株主数を増やすかは上場する市場に応じて決まりますが、発行した株数の中で、一般投資家向けにどれだけ放出するか(割り当てるか)はこのときに決まります。この一般投資家に割り当てる部分がIPOの募集分なんですよ。

IPOの募集枠が決まったら、残りは幹事証券会社が全て引き受けます。買い取るわけですね。

ところが一般投資家の枠、IPO枠が、発行する株数に比べて非常に少ないんですよ。
IPO銘柄がなかなか当たらない、というのはこういうことなんです。ネットで、この証券会社なら当たる!(ホントかい!)といってるのはこのことです。これは次回説明します。

どうしてそんな配分にするのかというと、これにはわけがあります。
仮にこの割当枠がもっと大きいとしましょう。

今はIPO銘柄の申込みが多く、大半が値上がりしています。
ところが相場が低迷して、新規上場で付いた初値が公開価格(募集価格)を下回ったらどうなるでしょう。
実際私が証券会社にいたときも経験しました。誰も入札しません。

IPOのブックビルディングに参加する人も減ります。
一般投資家枠の株数を増やしても

「そんなのいらん」

と言われると、発行した株が余ってしまいます。売れ残ってしまい、予定していたお金が入ってこなくなりますよね。
そうした事態を防ぐために、幹事証券会社が発行する株の多くを引き受けて売れ残りがないようにするわけですね。

さて、これで増資が終わりました。
大量の株を発行しましたから、企業には

「発行した株数✕募集価格(公開価格)」分のお金が入ります。

事前に機関投資家のヒヤリングでどれくらいの価格が妥当かは決まりますが(ブックビルディングの仮決定価格がこれです)、成長性が高いなど評価が良ければこの価格も高いものになります。

企業には株を発行しただけの資金が入ってくるわけです。

また創業者はたいていが大株主ですから、莫大な資産を手に入れることになりますよね。
大株主の持ち株比率が高い場合は、上場時に市場に放出したりします。
せっかく創業してここまでの優良企業を育て上げたわけですから、創業者利潤はこれまでの苦労が報われた証でもありますね。

じゃ、お金が入るとなぜいいのか。
これは株式公開で得た潤沢な資金があれば、IT投資や工場の設備投資、さらに新規出店などの事業拡大が可能になるわけです。
実際に飲食店チェーンや洋服チェーンなど全国規模のお店は、この資金を使い、次でお話する知名度の向上も相まってどんどん規模を拡大していったんですね。

IPO銘柄に申し込む際は、この上場で得た資金を企業がどう使おうとしているのか(ブックビルディングの際に開示されます)、その資金によってその企業がこれからどう成長していくのかをしっかり見極めて投資することをオススメします。
単に「儲かる」だけでは、株価の上昇は望めませんしね。

◯知名度が上がる。

上場はニュースになります。多くの投資家がその企業の名を目にすることになりますから、否が応でも知名度は上がります。
金融機関の信用も高まりますよね。
そうすると新入社員などの優秀な人材の確保も容易になります。
上場すれば企業情報の開示は必須ですから、就職を希望する方にとっても、企業の内容や働きやすさなどが事前にわかりますね。

もちろん今働いている社員の士気も上がるでしょうし、何よりも知名度が上がったことで取引先のパイプが太くなったり、新規開拓がしやすくなるといったメリットも見逃せません。
チェーン店などはテナント交渉にもいい影響があるのではないかと思います。

結果として企業の成長につながるわけですね。

◯いろいろな資金調達が可能になる。

上場すれば市場からの資金調達、例えば新たに株を発行して投資家を募る公募増資や社債の発行、ベンチャーキャピタルに出資を募るなど、いろいろな方法でお金を集めることができます。
結果それは最初にお話した企業の成長につながる投資に使うことができますから、新たな事業展開も可能になるわけですね。

◯社員の福利厚生

上場前から社員持株会を儲けている企業もありますし、公開にあたって創業者や大株主の持ち株を持株会に売却することがあります。
これは公開価格(募集価格)で売却されますから、手に入れた社員は財産形成に役立てることができるわけですね。

創業者もエライですが、上場にたどり着くまで会社の成長を支えたのは他ならぬ社員ですからね。
創業者(多くは社長など)の社員に対する思いなど、企業理念がここにあらわれるといっても良いと思います。

こんなところでしょうか。

なぜ私が今日の記事を詳しく書いたかというと、先ほども触れましたが、上場によってその企業がこれからどう成長していくのか、どのような企業理念を持って経営しているのか、
成長分野なのかどうか、投資の際それらを見極めてほしいからです。

スクリーニングでの銘柄探しもいいですが、IPO銘柄ー新規上場銘柄にはこうした魅力があるんですよ。
たとえIPOの抽選に当たらなくても、上場後に買ってテンバガー狙える銘柄は登場してくると思います。

どうでしょうかね。
IPO銘柄なら何でもいいといって企業内容も調べずに申し込むのはNGですよ。

では、今日はこれで終わりましょう。

 

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