株指南

信用取引ってなんだ? ⑤ 基本のしくみ−空売り活用編

前回記事の最後で現渡しに触れた際、空売りには買い戻し返済のほかに活用法がある、とお話しました。

第5回は、この空売り活用法について説明していきます。

①二種類の空売り
②現渡しができる場面
②現渡しのメリットが発揮できる場面

では順に進めていきましょう。

①二種類の空売り

証券会社サイトでもあまりこの二種類の空売りの区分けはしていませんが、空売りは厳密に言うとその目的から
・普通の空売り
・つなぎ売り
に分かれます。
通常の空売りはこのシリーズの第3回【信用取引ってなんだ? ③ 基本のしくみ−空売り編】、第4回【信用取引ってなんだ? ④ 基本のしくみ−返済編】でご説明したとおりです。

結論から言うと、普通の空売りでもつなぎ売りでも効果はどちらも同じ、実務もどちらも同じですからわざわざ区別する必要はないです。
区別して考えるメリットがないからどの証券会社もつなぎ売りに触れていないんだろうと思います。
一応「そんな言葉もある」程度でいですが、普通の空売りの場面でもこの使い方ができますので覚えておいてくださいね。

ではつなぎ売りについて説明しますね。

あなたが今A社株を持っていたとしましょう。
昔から持っている株で配当もいいし、当面売るつもりもない。
そもそも株の売買は苦手だし、まして信用取引なんて考えもしないけど、この株の動きを見ていると400円から500円の間で上がったり下がったりを周期的に繰り返してる。
持ってるだけじゃつまらないからこの上げ下げを利用して利益をあげられないかなできないかな…

こんなときに使うのがこのつなぎ売りの手法です。
この場合だと500円でつなぎ売り→400円で買い戻し。これを繰り返していけば大きな利益が上げられるわけですね。

ではもし500円でつなぎ売りして上がってしまい、期日までに500円を下回らなかった、そんな場合はどうでしょうか
高値で買い戻しして損金を払うのはいやだ、そう考えるのでしたら、つなぎ売りした現物株を現渡しで返済して、建玉分の現金を受け取ればいいわけです。

結局普通の空売りとどう違うの?

ということですが、最初に書きましたとおり全く同じです。普通の空売りと変わりません。
ではなぜ今でも「つなぎ売り」という言葉があるのかというと、かつての信用取引で使われた制度だからです。

私のいた野村證券は、信用取引を始めるためには預かり資産(野村證券に預けている株や国債、社債など)が5,000万円以上必要だったんですね。
その上で投資経験とか、資金の性格とか、資力(ほかに財産が十分にあるか)を総合的に判断して、支店長の面接を経てようやく信用取引口座が開設できたんです。
なぜそんなルールがあったかというと、信用取引がそれだけリスクを伴うものだからなんですね。
ですから大きな金額で現物株を売買されていお客様でも信用取引だけはやらない、というお客様は多かったですね。

そこで使われたのがつなぎ売りで、「つなぎ売り限定で信用口座開設」ということができたんです。
たとえば…
定年退職された方で、会社在籍中に積み立てた持ち株が大きな財産になった、でも愛着のある株だから売るつもりもない。
しかしこの株の価格変動で利益を得たい、というケースです。

そのなごりなんですよ。 「今や昔」のお話ですね。

②現渡しができる場面

ではどういう場面に現渡し返済ができるのかを説明しますね。
もうあなたはお気づきになっているかもしれませんが、「空売りした銘柄の株をいま持っている」場合です。つまり①でお話したつなぎ売りの場合などです。

株を持っていなければ株の返済はできませんからね。

③現渡しのメリットが発揮できる場面
・空売りしたあとに値段が上がってしまった。損金は払いたくない。
・今持っている現物株をつなぎ売りの目的で空売りしたが想定以上に下がってしまった。

最初のケースは①でご説明したとおりです。現渡しすれば建玉分の現金が受け取れます。
二番めのケースはでは、買い戻しして利益金は得られますが、持っている現物株も下がっているから評価損が出ています。
結局損益はプラスマイナスゼロ、現物株は下がっているから時価評価も下がっている。これでは次の作戦も立てられませんよね。

ですから現渡しして建玉分の現金をもらって、次の投資チャンスに備える、と考えるわけです。

空売りは売買差益狙いだけではなくて、持っている現物株をこんなふうにして活用できるわけです。

持っている現物株と同じ銘柄を買建てる「親子どんぶり」は絶対ダメですが(次回ご説明します)、持っている現物株と同じ銘柄を空売りするのにはメリットがあるわけです。

おわかりいただけたでしょうか。

では、今日はこれで終わりましょう。

 

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