信用取引について、これまで
第1回 信用取引の概略
第2回 買いの新規建て−買建てについて
第3回 売りの新規建て−空売りについて
の順にご説明してきました。
今日、第4回は買い建玉、売り建玉を反対売買で決済する場面ー返済についてのお話です。
①いざ、返済。
②どうしよう…返済期日が来週に…
の順で。
では、まず①から。
なぜ返済と呼ぶのかには以前も触れましたが、
・買うときに借りた買建て代金を売り決済して返す
・空売りのとき借りた株を市場で買い戻して返す
ので返済と呼ぶわけですね。
お金を借りるにしろ株を借りるにしろ、建玉のままじっとしていると金利は膨らんできます。
いまのこの低金利で買い方2.8%、売り方1.15%ですから(制度信用取引の場合)、高金利の時代ともなればかなり高い金利を払わなければならなくなります。
このため、もともと信用取引というのは短期売買が基本です。
加えて信用取引は一般的に返済期日(単に期日ともいいます)が決まっています。(SBI証券には無期限の制度がありますが…)
それもあって信用取引では「一回の利益額は少なくても短期売買を繰り返すことで利益を積み重ねる」のが本来のスタイルです。
デイトレと同じ考え方です。
買建て金額に対しての利益は少なそうに見えても、保証金に対する利益でみれば大きいわけですよ。
ですから銘柄選びも当然「じっくり待つ」なんてことはせずに
◎買建ての場合は
・株の上昇局面に乗っかり(順張り:じゅんばり といいます)、少し上がったところで売る。
・株の下落局面で安値を狙い(逆張り:ぎゃくばり といいます)、下に突っ込んだところで買ってリバウンドで売る。
・株価が反対方向に動いたら損であっても潔く売って退却。(損切り、ロスカットといいます。)
◎空売りの場合は
・株の上昇局面、特に急騰している銘柄の高値に売り向かい、株価が息切れしたところで買い戻し。
・株の下落局面で自律反発したところで売り、勢いを失ったところで買い戻し。
・株価が反対方向に動いたら損であっても潔く売って退却。(損切り、ロスカットといいます。)
これが信用取引の常套手段です。
今は投資家それぞれ考え方も違うでしょうが、今も昔もこの信用取引の売買スタンスが基本です。
金利がかかる、期日が決まっている、この二つは絶対に忘れないようにしてくださいね。
「借りたらさっさと返済する」のが一番です。
②は、建玉を返済しないまま期日が来てしまった場合です。
結論から言うと、まずほとんどの場合「大ケガ」しての返済となります。
だからあれほど言ったのに…
たしかに上で書いたように、ダメだとわかったらさっさと損切りすべきなのですが、人間、なかなかそうはいかないんですよ。
デイトレやってる人はできるでしょう。そもそも損切りが伴うことを念頭に売買していますから、「何%損が出たら損切り」、と自分でルールを決めておられる方も多いです。毎日何十回という売買をしますからね。しかしデイトレのような売買頻度に慣れていない人は何を言い出すのかというと
「6ヶ月あるからなんとかなるでしょ」(制度信用取引の場合です)
これが命取りなんです。なんとかなる場合もありますけど…
結末をご説明しましょう。
期日の段階で「買い建玉が下がったってしまった」「売り建玉が上がってしまった」というケースです。
◎買い建玉が期日を迎えた場合
・万やむを得ず断腸の思いで損切り。買い金額と売り金額のマイナス差額(=損金)+半年分の金利 を現金でお支払い。
・買建てした金額+半年分の金利を現金で支払い、現物の株を引き取る。(現引き げんびき)
現引きは期日前でもできますが、まずやらないですね。
買値まであと少し、どうしても損切りするのがイヤという場合は選択肢になるかもしれませんが、その分の資金を用意しないといけません。
ケース・バイ・ケースとはいえ、資金効率は恐ろしく悪くなります。
その資金があるなら他の現物株を買って利益をとりに行くか、保証金として差し入れてやはり他の銘柄を買建てしたほうが建設的です。
◎売り建玉が期日を迎えた場合
・万やむを得ず断腸の思いで損切り。売り金額と買い戻し金額のマイナス差額(=損金)+半年分の金利 を現金でお支払い。
買い建玉が期日で値上がりすれば何も心配することなく売って返済し、利益を受け取ればいいのですが、売り建玉が値下がりして利益になっている場合は買い戻して利益を確定する以外に「現渡し げんわたし」を行うことがあります。これは次回記事でご説明します。
また「期日まで持つと大ケガをする」というのは「新規建したけれども期日までに利益を出せなかった」ということを意味します。
期日まで持てば1回くらいはチャンスがあっただろうに…
そう考えたくもなりますよね。でもね…
その原因はまた先の記事で考えることにしましょう。
信用取引は短期売買を行うもの ー このことをよく覚えておいてくださいね。
では、今日はこれで終わります。
★本日の証券用語
・期日 きじつ:返済期日。買い建玉、売り建玉の返済最終日のこと。
・順張り じゅんばり:株の上昇局面に乗って買い利益を狙う方法。下落局面で空売りかけるのも順張りですね。
・逆張り ぎゃくばり:株の下落局面で安値を待って利益を狙う方法。上昇局面で空売りかけるのもこの逆張りですね。
・損切り そんぎり:ロスカットともいいます。涙をのみ、損して反対売買すること。
・現引 げんびき:買建ての場合、建玉に見合う金額を支払い、現物株を引き取って返済すること。建玉分の現物株を保有することになります。
・現渡し げんわたし:空売りの場合、建玉分の株を渡して返済すること。現渡しできるケースは限られます。