株指南

信用取引ってなんだ? ③ 基本のしくみ−空売り編

さて、今日は信用取引についての第3回目です。
「新規買建て」の「空売りのルール」について説明していきましょう。

ではさっそく。

◎空売りする際の条件

・委託保証金
・委託保証金率
・有価証券での代用
・有価証券の掛け目
・制度信用取引と一般信用取引があること
・空売りできる銘柄(貸借銘柄)が決まっていること

以上のことがらについては、前回記事【 信用取引ってなんだ? ② 基本のしくみ−買建て編 】でご説明した内容と同じしくみですのでこちらをご覧いただけますでしょうか。
信用取引の基本ルールは変わりません。

今日は空売りについて

①株持っていないのにどうして売ることができるのか。
②空売りのしくみ。
③制度信用取引での空売りと一般信用取引での空売りの違い。

の順に説明していきましょう。

①株持っていないのにどうして売ることができるのか。

素朴な疑問ですよね。あなたもそう思ったのでは?

具体的なメカニズムは次の②で説明しますけども、
早い話が「よそから株借りてきて売る」「買い戻したらその買った株を借りた人に返す」んですよ。

そんな株を貸してくれるいい人なんているんか?

いるんですよ。自分で探さなくてもいいですよ。
この「株を貸してくれる人」というのが前回記事で登場した「日証金ー日本証券金融株式会社」なんです。証券会社も貸してくれます。

もちろんただで貸してくれるわけではないので、金額換算して金利をわなければいけません。これが「貸株料(かしかぶりょう)」です。
詳しくは③で説明しますが、とりあえず

・制度信用取引の場合  1,15%
・一般信用取引の場合  証券会社によって異なる

と覚えておいてください。

では次です。
株を売却すれば普通はその売却代金というのが発生しますよね。じゃ売却代金はどこにいちゃうの? というと、証券会社または日証金に預けられます。

預けるんだったら私、金利がもらえるんじゃないの?

そうでうよね。そのとおりです。
でもいまは低金利の時代で 0.00%なんです。本来はもらえるしくみなんですけどね。この空売りした人がもらえる(はずだった)金利のことを「売り方金利」、前回記事でご説明した、買建てした人が払う金利のことを「買い方金利」といいます。

ここまでよろしいでしょうか。

では②、空売りのしくみについて

基本的なことはすでに①でご説明しました。ではどういうときにこの空売りをするのかを説明しますね。

・株式市場は高値圏、そろそろ一旦上昇が止まるる頃だ。チャートを見るとしばらく下降トレンドに入るかもしれない。注目していたA株も下げるだろうね。
・仕手筋の仕業なのか、B株が急騰している。買いが殺到して高値をつけるところは売りどきなんだけどなあ…

こんなとき、先に売っておいて下がったところで買い戻せば差額で儲けられますよね。
「下がったときでも儲けられる」、これが空売りの最大の魅力です。
現物株ではこれができませんね。下がっていくところをただただ眺めているしかないし、持っている株の評価損はどんどん膨らんでいくばかりです。
少しでも損を減らしておきたい、そんな「リスクヘッジ」にも使えますよね。

ところが、世の中そんなうまい話ばかりじゃありません。

空売りした値段から株価が上がったらどうなるの?

どうなるの? って、そりゃ損しますよ。売った値段よりも高い値段で買い戻すわけですからね。高い値段で買ってしまった株をあきらめて安い値段で売るのと一緒のことです。

その上、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」という金利が発生することがあります。
先ほど、空売りをすると「本来は売り方金利がもらえる」と書きました。ところが売り方が金利を払わなくてはいけない場合があります。このときの金利を逆日歩といいます。品貸料(しながしりょう)ともいいます。 どのようにして発生するかというと、

・買い残 買い建玉の合計株数
・売り残 売り建玉の合計株数

で、通常は  買い残 > 売り残 であることがほとんどです。
しかしまれに売り残が増える、または買い残が減って 売り残 > 買い残 の状態になることがあります。

このときに株を貸す証券会社や日証金も貸す株がなくなってしまって(貸株超過)、生命保険会社や損害保険会社などから借りなければならなくなります。これまでご説明したとおり、株を借りるには貸株料を払わなければなりませんから、日証金がそれを生命保険会社や損害保険会社などに支払うわけですね。
これを売り方が負担するわけです。
逆日歩が発生するとその銘柄の値動きがどうなるか、買い残と売り残の関係については後日あらためて説明します。

最後に③、制度信用取引での空売りと一般信用取引での空売りの違いについて説明しますね。

◯「一般信用取引では、逆日歩が発生しない」

これが制度信用取引と一般信用取引の最大の違いです。
制度信用取引では株を借りるのに日証金のお世話にならないといけないですが、一般信用取引の場合はあなたと証券会社との二者関係なので、よそから株を借りてくるということがありません。
ですので一般信用取引の場合は逆日歩を気にする必要がないわけです。

◯貸株料は制度信用取引の場合、先述の通り 1.15%。一般信用取引では各証券会社異なります。

SBI証券を例にとると
返済期限無期限の場合 1.10%、短期の場合 3.9%、日計り取引の場合は100万円以上 0.00% 100万円未満 1.8%、期日超過 1.8% と定められています。

◯返済期日については買い建てと同じルールで、

・制度信用取引の場合 6ヶ月。
・一般信用取引の場合 証券会社によって異なる。

で、一般取引の場合は無期限や数ヶ月の場合、日計り取引などに分かれます。

◯空売りできる銘柄、つまり貸借銘柄も異なる。

・制度信用取引の場合 取引所が定める銘柄 ただしその中でも証券会社によって空売りできない銘柄がある。
・一般信用取引の場合 証券会社によって異なる。

となっています。

ちなみに、制度信用取引のうち買建てできる銘柄(制度信用銘柄)と空売りできる銘柄(貸借銘柄)の数は、東証1部を例にとると、2021年末現在で、

・制度信用銘柄 2,178 (全上場 2,183社の99.8%)
・貸借銘柄   1,901 (全上場 2,183社の87.1%)

です。

さて、今回のお話、おわかりいただけたでしょうか。

先ほど、「通常は  買い残 > 売り残」 とご説明しましたが、現物取引はすべて買いから入りますから、それに慣れているせいか売りから入るのは難しいです。
そんなあらわれでしょうかね。

では。今日はこれで終わりましょう。

★本日の証券用語

・貸株料 かしかぶりょう:空売りした売り方が売り建玉の金額に対して支払う金利のこと。
・売り方金利 うりかたきんり:空売りした売り方が売り建玉の金額を証券会社や日証金に預けて受け取る金利のこと。現在は0.00%。
・買い方金利 かいかたきんり:買建てした買い方が買い建玉の金額に対して支払う金利のこと。
・買い残 かいざん:買い建玉の合計株数のこと。
・売り残 うりざん:売り建玉の合計株数のこと。
・貸株超過 かしかぶちょうか:売り残のほうが買い残よりも多くなった状態のこと。
・逆日歩 ぎゃくひぶ:貸株超過のとき、日証金が生損保から株を借りる金利のこと。売り方が支払う。
・品貸料 しながしりょう:逆日歩のこと。

 

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