原油価格が上がって株が下がるって理屈はわかったけど、逆のケースもあるよね?
あります。そうなんですよ。そんなに単純じゃないんですよ。
厄介なことにどんな材料も「どうとらえるか」「どう解釈するか」「どちら側から見るか」で動く方向がその都度変わります。
原油価格も為替も金利も株価も…
だから「マーケットのことはマーケットが決める」なんですよ。
でも一応パターンはあるので、今日はそれを整理していきましょう。
①原油高→株安
②原油高→株高
この二つの原因を確認していきましょう
まず①です。
ちょうどよいグラフが見つかったのでご紹介します。
ロイターグラフィックスホームページ 「日経平均株価とドル円相場・原油先物価格の推移」
( https://graphics.reuters.com/MARKETS-OIL/LJA/bdwpkdjqnvm/index.html )
昨年からの動きです
まず下から二つのグラフ、原油価格と円ドル相場がきれいに連動していますね。
原油高 → アメリカの物価上昇 → 金利上昇 → 日米金利差拡大 → 円安 という公式通りです。
そして2021年9月の動きを除けば、日経平均が原油価格上昇と円安に連動していますね。
原油高と円安のダブルで物価上昇 → 景気圧迫 → 株価下落
となっていきます。
これが前回記事【 ウクライナ情勢と株価 ② 】に書いた、教科書通りのパターンです。
ではその逆のことが起きる②のパターンの原因を考えましょう。
実はアメリカでは日本と逆パターンになるんです。
原油高→物価上昇→企業業績向上→株高
日本は石油輸入国ですが、アメリカは世界トップの産油国(消費もすごいけど)なので動きが違ってきます。
原油価格上昇で物価は上昇するんですが、それを上回る経済成長が起きる、とアメリカでは考えるんですよね。
だから原油高でもニューヨーク市場は業績が上向くという期待で株高になるケースがあるわけです。
令和3年(2021年)、原油がどんどん上昇する中で、年末にかけて株価は史上最高値をつけています。
ニューヨーク市場が上がれば、つられて日本株が上がるというパターンになるわけです。
結果的に 原油高→株高 です。
このグラフ。 これは先進国23カ国の株価をドルベースで指数化したものなんですけれども、リーマン・ショック後は世界的に株は上げ続けてるんですね。
MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)ホームページ "MSCI World Index"
( https://www.msci.com/documents/10199/178e6643-6ae6-47b9-82be-e1fc565ededb )
これに原油価格を重ね合わせてみましょう。
野村アセットマネジメント ホームページ 「原油相場と幹部式相場の関係は?」から「WTI原油先物価格と世界株」
( https://www.nomura-am.co.jp/market/marketcomment/20211018_Global_Equity.pdf )
どうでしょうか。長い期間で見てみると 「世界的には」原油価格の上昇と株価の上昇がリンクしていますよね。
原油価格上昇→株価上昇 なんですね。
でもアメリカも令和4年に入ってからは、原油高 → 物価上昇 → 金利上昇 → 株価下落
という日本と同じパターンで調整を続けています。
なかなか教科書通りにはいかないですね。
では最後に、原油価格が下落したらどうなるのか、をお話しますね。
基本的には原油価格上昇の全く逆を考えればいいので、株価は上がると考えてよいです。
しかし、原油価格があまりに低下すると海外投資家は売ってきます。つまり株価は下がります。
産油国、特にOPEC加盟国というのは 原油産出量 ✕ 原油価格 が自分のフトコロに入ってくるお金ですから、原油価格が下がってきたら実入りが少なくなるわけです。
その穴埋めのために株を売ってくることがしばしばあるんですね。
結構ガンガン売ってきます。
実際そういう動きをしますので、原油価格が下がっている場合にはくれぐれもご注意を。
このように原油価格、円ドル相場、金利と日本の株価というのはその時々で複雑に絡み合って動きますので、あまり「原油が上がったらこうなるはずだ」と固定的に考えないことです。
むしろニューヨーク市場がそれらを全部消化し、織り込んでくれますから、ニューヨーク市場をフィルターとして影響を考えていったほうが良いのではないでしょうか。