ナンピン買いについて教えて下さい。ネットではやってはいけない手法と買いてあるのですが…
わかりました。お答えしましょう。
ナンピンは難平と書きます。難しいんですね。
買ったものの値下がりした場合、安いところでもう一度買って、平均買いコストを下げる方法です。
最初に買った値段に戻らなくても半値戻し(下げ幅の半分まで値段が上昇すること。下がる場合は半値押しといいます。)でトントンになる、というメリットがあります。
ネットでも賛否両論あって、特に目立つのは「ナンピンしたら結局損した」「ナンピンはやってはいけない手法」というネガティブな意見です。
牛田権三郎と並んで江戸時代末期の天才相場師と呼ばれた本間宗久も、
「不利運のとき、売り平均買い平均せざるものなり」(ナンピンはするな)
と説いています。
しかし、私自身はナンピン買いは非常に有効な投資法だと思います。
が…
「ナンピン買いをするタイミングを間違わなければ」という但し書き付きです。
ここをご説明しましょう。
これが令和4年(2022年)2月22日現在の日経平均の日足の動きです。
仮にあなたがこの位置で買ったとします。
その後株価は下落。
そこであなたはナンピンを考えます。
この位置でうまく安値が拾えたとしましょう。
もちろんこの時点でその先のことなどわかるわけはないので、買ったタイミングとしては最高の位置ですね。
ところが見ていただくとわかるように、その後上昇しますが、前の買値まで届かないどころか、半値水準手前まできたところで再び下げ始めています。
その後大きく下押ししていますね。傾向としてはこの先下落傾向のように見えます。
ではズームアウトして週足で見てみましょう。
一番上の◯はあなたが最初に買った位置です。高値の30671.10円をまさに抜きにかかろうという位置ですね。
抜いてくれば31,000円くらいまで駆け上がりそうです。
私でも買っていたかも知れません。
ところが…
その後、株価は下落を開始。一時反発はするもののまた下がり始めます。
そしてあなたは急落した一番下の◯のところでナンピン買いをしたわけですね。
一時反発があって、あと少しでトントンのラインまで手が届くというところで再び下落。
最初の買値がまた遠ざかってしまいました。
あくまで結果論ですが、振り返ってみてどこがいけなかったのか考えてみましょう。
一番最後のチャートを見てください。
①その前の高値(2021年2月、30467.75円)から2021年9月の30671.10円まで、半年以上かかっている。高値を抜きにかかるにはもう少し時間がかかったのではないか。(これを日柄整理が進んでいない、といいます。)
②買った値段は高値だったけれども、中期的に考えて緑色の線のように傾向線を引いてみた。当時の状況から考えれば上昇傾向にあったと考えた。
③ところが、真ん中の○の位置で株価は緑色の傾向線を割り込んだ。チャートは崩されているので、傾向線の見直しをしなければいけなかった。
④急落場面でのナンピンなのでリバウンドを期待したのは間違っていない。しかし中期的には下落傾向に見える。この傾向を見落としている。
⑤リバウンドはあったがトータルで利益になるところまでは届かなかった。トータル損でも売るべきだった。
考えられるのはこの5つです。詳しく説明すると、
①あなたは比較的短期での利益狙いで高値を追いかけたわけですね。たしかに日柄整理というのは大切で、高値づかみした人の戻り売りや期日売り、空売りの買い戻しが終わると株価は軽くなります。もう少し買うのを待つべきだったのでは、と考えられますね。
しかし中期的な投資スタンスに立てばそれはそのとおりなのですが、短期的な視点でみると買いに行ったのは決して誤りではなかったと思います。
あくまで結果論です。
②私でもこう判断したと思います。たしかに下値は切り上がってきているし、再び上昇に転じると多くの人は考えたでしょう。
問題はここからです
③緑色の傾向線を割り込んだ時点で損切りすべきでした。ナンピンをするにしても、②の上昇シナリオを見直して、今後の傾向を考えるべきでした。
④傾向線を割り込んだことで下落傾向に入ったように見えます。その中であなたが買った急落場面で完全にチャートが崩されているので、もう一段安いと場面があると考えるべきでした。そこから出動しても遅くないです。
⑤利益になるところまで待ったのがいけなかったですね。
証券会社勤務時代に、多くの失敗はこれに尽きます。
高値をつかんでしまったのはしょうがないです。
結論として、
・中期的な傾向を無視して単に安いという感覚だけで買ってしまった。
・つい欲張って損切りできなかった。
ということですね。
最初のミスは相場の格言で「下手なナンピン、スカンピン」と言われています。ネットに出てますよね。
二番めのミスは「ナンピンで利益を出す」と考えたことです。「ナンピンは損を減らすもの」と考えないといけませんね。
結局、株を新しく買う場合と同じなんですね。
株式市場全体の方向を考えたか、株価の中期的な傾向を見たか、個別銘柄であれば、業績に変化はないか、を考えた上でナンピン買いするかしないかを決めないといけないです。
先ほどの格言は、ナンピンするなとは言っていないです。単に、◯割り下がったから、とか、これは安い。という感覚だけでナンピンするなという意味なんですよ。
ちなみに…
最初に書いた本間宗久翁の「不利運のとき、売り平均買い平均せざるものなり」のあとには
「思い入れ違いの節はさっそく仕舞い、四五十日休むべし」
と続いています。
ご参考になりましたか?
さて、今日はこれで終わりましょう。
では。