株指南

信用取引ってなんだ? ② 基本のしくみ−買建て編

さて、今日は信用取引の第2回。
信用取引で「新規建て」で「買建てする際のルール」について説明しようと思います。

まずは前回記事【信用取引ってなんだ? ① 基本のしくみ−新規建てと決済】のおさらいから始めましょうか。

・新規建て:新たに信用取引で買付け、また売却すること。
・返済:反対売買すること。新規建した買付け分を売却して決済、また新規建てした空売り分を買い戻して決済すること。
・建玉:まだ返済していない買建て分、売建て分のこと。買い建玉、売り建玉。
・買建て:新たに信用取引で株を買付けすること。
・空売り:新たに信用取引で株を売却すること。

でしたね。
ではここからは買建ての実務をば。

◎「3.3倍」買える意味

まず最初に、保証金のことを正式には「委託保証金」といいます。特に断りがなければ「保証金=委託保証金」として書いていきますね。
前回記事で買建ての場合、保証金の「3.3倍まで買える」とご説明しました。まずこの「3.3倍」の意味をご説明します。

信用取引のルールで、「買付け代金に対してどれだけ保証金が必要か」とういのは

「買付け代金の30%以上かつ30万円以上」

と決まっています。(法定です。) この率(30%)のことを「委託保証金率」といいます。
(ごく稀ですが、市場が過熱した場合などに引き上げられることがあります)

信用取引でA社株を1,000円で1,000株買付けする場合を考えましょう。

1,000円×1,000株=1,000,000円(買付け代金) 手数料は計算しません。

1,000,000円(買付け代金) × 30%(委託保証金率) = 300,000円(委託保証金)

となりますね。逆算すると、

1,000,000円(買付け金額) ➗300,000円(委託保証金) =3.3333333…(倍)

なので保証金の「3.3倍」まで買える、というわけです。
「3.3倍」の意味、おわかりいただけたでしょうか。

◎3.3倍「買える」意味

3.3倍まで買えるといのはおわかりいただけたとして、なぜそんなことができるのかをご説明しましょう。
それは… 「証券会社がお金を貸してくれる」 からです。
ただで貸してくれるわけではありません。証券会社に金利を払ってお金を借ります。
もちろんお金を借りるわけですから、返さないといけません。 だから売り決済のいことを決済と言わずに「返済」というんですね。

この金利は信用取引によって違います。信用取引には「制度信用取引」と「一般信用取引」の二種類があって(すぐ後にご説明します)、

・制度信用取引の場合 2.8%
・一般信用取引の場合 証券会社によって異なる

となっています。
一般信用取引の金利は証券会社によって異なるのですが、さらに返済期限 ー いつまでに売って決済しなければならないか ー によっても異なってきます。

参考までにSBI証券の例ですと、一般信用取引の金利は

・返済期限(決済期限)無期限で買う場合 2.8%
・一日で決済する場合(日計り取引:ひばかりとりひき) 買付け代金100万円以上 0.00% 買付け代金100万円未満 1.8%

となっています。
制度信用か一般信用か、日計り取引にするかどうか、は買うときに選択しますので、どれくらいの期間で利益を狙うかによって決めればよいです。
日計り取引というのはデイトレと理解してもらえばいいと思います。
ただ、「一般信用の日計り取引」を選択した場合は、買ったらその日のうちに売らないといけないですが、下がって売れなかった場合など、翌日以降に買い建玉を持ち越す場合は、「期日超過金利」として 1.8% かかります。

ちょっと複雑ですね…

とりあえずは「信用取引で買う場合でも、取引方法の種類がいくつかあって、証券会社によっても条件が異なる」

とだけ覚えておきましょう。

◎有価証券での保証金の代用

これまでの説明では、保証金が現金である場合をご説明しました。
この保証金は持っている株式や国債でもOKです。証券会社によっては投資信託もOKです。
この場合の株式や国債、投資信託のことを「代用有価証券:だいようゆうかしょうけん」といいます。

この代用有価証券を時価で現金の金額に換算して、保証金にすることができるわけです。
保証金として差し入れ、買い建玉があっても、売却することは可能です。
現金の金額に換算する方法は通常、

・株式の場合 買付け時点の時価評価額 ✕ 80%
・国債の場合 買付け時点の時価評価額 ✕ 95%

と決まっています。この率を「掛け目 かけめ」といいます。
ただ株式市場の動きによって、取引所や証券会社がこの掛け目を変更しますし、代用有価証券+現金でなくてはいけないという場合もあります。
特に株で差し入れる場合などは株価が下がると時価評価が下がってしまい、保証金がたりなくなってしまうこともありますから、代用有価証券で保証金を差し入れる際には注意してくださいね。
代用有価証券の銘柄と買建て銘柄を同じにすること(親子どんぶり・二階建て)は厳禁です。これは後日の記事で詳しく書きます。

◎制度信用取引と一般信用取引

・制度信用取引 取引所が定めるルールによって行う信用取引。
・一般信用取引 証券会社が定めるルールによって行う信用取引。

です。制度信用取引はもともと信用取引制度が始まったときからあるルールです。取引所が決めたルールですから、どの証券会社でも条件は同じです。それに対して一般信用取引というのは
証券会社ごとに決めたルールですから、証券会社ごとにルールが違います。
あなたがこれから主に信用取引で株の売買をしようと思うなら、どの証券会社がどんなルールを決めているか、どの証券会社が自分の投資方針に合っているか、よく検討してくださいね。

制度信用取引と一般信用取引の大きな違いは「返済期日」と「お金を借りるしくみ」です。空売りの際にも大きな違いがありますが、これは後日説明します。
では最大の違いである「返済期日」から説明しますね。

返済期日というのは、その名の通り、借りたお金を返さなければいけない日、つまり「この日までに売り決済しないといけない」期日のことです。

・制度信用取引の場合 「6ヶ月」と決まっています。
・一般信用取引の場合 証券会社によって異なります。3ヶ月の場合もあれば上で例に上げたSBI証券のように無期限の場合もあります。

ですから、どれくらいの期間で売買しようと考えるのかで、どの証券会社を選ぶのか、どちらの取引を選ぶのか、を決めればよいと思います。

次に「お金を借りるしくみ」ですが、正直なところこれは気にする必要ないです。

・制度信用取引の場合 証券会社が日証金(にっしょうきん:日本証券金融株式会社)からお金を融通してもらい、あなたに買付け代金を貸し付ける。
・一般信用取引の場合 証券会社が直接あなたに買い付け代金を貸し付ける。

という違いです。制度信用取引の場合は日証金が受け皿となる、一般信用取引はあなたと証券会社との二者関係、と覚えておけば良いでしょう。

◎買付けできる銘柄

制度信用取引で買付けできる銘柄を「制度信用銘柄」空売りできる銘柄のことを「貸借銘柄 たいしゃくめいがら」といいます。
これは要注意です。全部の銘柄が信用取引で買付けできるわけではありません。
これも証券会社によって異なります。

・制度信用取引の場合 取引所が定める銘柄。(1部、2部、マザーズ、JASDAQ)
・一般信用取引の場合 証券会社が定める銘柄。(1部、2部、マザーズ、JASDAQ)

ただし制度信用取引であっても証券会社によって信用取引で新規建てができる銘柄とできない銘柄がありますので注意が必要です。
これは証券会社のアプリやサイトで確認できますので、銘柄選びの際に必ず参考にしてくださいね。
業績最高、買いタイミング最高、いざ買おうと思ったら信用取引では買えなかった… なんてことがよくありますのでね。

どうでしょうか。
今日はまず 「新規建て」のうちの「買建て」についてご説明しました。上に書いた

・保証金と買建て金額の関係
・種類によって異なる買建て条件
・買建て可能な銘柄

をしっかり把握してくださいね。

さて、ここからちょっと余談です。

制度信用取引の際、日証金が証券会社に買付け資金を融通するとお話しましたね。
この日証金は、信用取引の資金と空売りの際の貸株(後日ご説明します)を融通する日本で唯一の会社で、東証1部に上場していて売買が可能です。銘柄コードは8511です。
市場売買が活況になると信用取引も活発になりますから、業績が向上します。つまり株式市場が活況になれば日証金の株価にとってはプラス材料、ということですね。

さて、長くなりましたが今日はここまでにしましょう。
では。

★本日の証券用語
・委託保証金 いたくほしょうきん:信用取引の際に差し入れる保証金のこと。
・委託保証金率 いたくほしょうきんりつ:信用取引での買付け金額に対する保証金の割合のこと。
・代用有価証券 だいようゆうかしょうけん:現金の代わりに保証金として差し入れる株式、国債などの有価証券のこと。
・掛け目 かけめ:代用有価証券を保証金として差し入れる際、現金に換算する割合のこと。
・親子どんぶり おやこどんぶり:代用有価証券と買い建玉を同じ銘柄にすること。二階建てともいいます。
・制度信用取引 せいどしんようとりひき:証券取引所が定めたルール(決済期日や金利、銘柄)によって行う信用取引のこと。
・一般信用取引 いっぱんしんようとりひき:証券会社が定めたルール(決済期日や金利、銘柄)によって行う信用取引のこと。
・返済期限 へんさいきげん:新規建てした買い建玉、売り建玉を反対売買で決済しなければいけない期日のこと。
・日計り取引 ひばかりとりひき:買った銘柄をその日のうちに売ること。空売りした銘柄をその日のうちに買い戻すこと。現物取引の場合でも使います。
・制度信用銘柄 せいどしんようめいがら:信用取引で買建てできる銘柄のこと。
・貸借銘柄 たいしゃくめいがら:信用取引で空売りできる銘柄のこと。
・日証金 にっしょうきん:日本証券金融株式会社。信用取引の資金と空売りの際の貸株(後日ご説明します)を融通する日本で唯一の会社です。

 

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