株指南

投資部門別売買状況

前回記事でコソッと触れた「投資部門別売買状況」
今日はこのお話をしようと思います。

これを見れば市場の「裏の動き」がわかります。
市場全体がこれからどうなりそうか、ストーリーを考えることができます。

株初心者の方でも

「ん〜、そういうことだったのね」
「なるほどね…」

と納得していただけるはずです

なのに…
広告だらけのサイトや動画で、なぜかこれを教えているものがないんですよね。(どこかにあるんでしょうけど。)
別に特別なものじゃないです。ギョーカイの方なら普通に「ああ、あれね」と思う表なんですけどね。

じゃ、説明していきましょう。
この投資部門別売買状況は普通毎週木曜日(月曜日が祝日だったら金曜日)に日本取引所グループから発表されます。
「株式市場のプレーヤーがどんな動きをしたのか」がわかる表です。

こちらから誰でも見ることができます。

日本取引所ホームページ https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/index.html

今日覚えてほしいのは、
①株式市場のプレーヤーは誰なのか
②どのプレーヤーが株式市場に影響を持っているか(影響を与えているか)

この二つです。

毎週発表されますが、月間ベース、年間ベースでも公表されていますので、今日は「年間」「2020年」の「東証1部」の表を取り出してみましょう

 

 

頭がクラクラきたあなた、ゆっくり説明していきますので焦らずについてきてくださいね。

まず①の株式市場のプレーヤーは誰なのか、です。

それは、個人、海外投資家、一般企業、投資信託、生損保、普通銀行・信託銀行、その他の金融機関

です。

表を見てみまそう

まず大きな表が縦に4つ並んでいますね。
上から

自己と委託
→証券会社自身が自分のお金で売買するのが自己。証券会社に取引所へ注文を出してもらうのが委託。通常は委託です。

そのうち委託の内訳(法人、個人、海外投資家、証券会社)
→証券会社というのは小さな証券会社が別の証券会社に頼んで注文を出してもらうケースです。無視していいです。
ですから市場のプレーヤーは大きく分けると法人、個人、海外投資家、の3つです。

そのうち法人の内訳(投資信託、事業法人、その他法人等、金融機関)
→投資信託は証券会社はもちろん銀行や郵便局でも売っているアレです。事業法人は普通の企業、その他法人は公益団体とか。

そのうち金融機関の内訳(生保・損保、都銀・地銀等、信託銀行、その他金融機関)
→法人の中の更に金融機関の内訳です。その他金融機関というのは政府系金融機関など。

ですから、株式市場のプレーヤーというのは

個人、海外投資家、一般企業、投資信託、生損保、普通銀行・信託銀行、その他の金融機関

ということになります。
ちょっと細かいですが、覚えにくければ

個人、海外投資家、一般企業、金融機関

くらいの感覚でいいでしょう。イメージつかめましたか?

でも実際、生損保、普通銀行・信託銀行から株式市場へ流れてくるお金の多くは、もともと、保険金や年金などの運用資金や信託資金ですから、もとをたどれば個人や一般企業のお金なんですよね…
あなたのお金はもうすでに間接的に株式市場に流れてるんですよ。

では②について説明していきましょう。

この表からは、株式市場のプレーヤーが誰なのか、に加えて

・どのプレーヤーが一番売買しているのか?(影響を与えているか?)
・プレーヤーがどんな行動をとっているのか?

がわかります。

上から二番めの表を見てください。
その中で、数字の左から二番め、委託部門における各プレーヤーの「比率」を見てみましょう。
部門それぞれに売り、買い、合計 とありますから、ここでは合計欄を見てください

法人 7.8%、個人 19.0%、海外投資家 72.5%

どうです?
日本の株式市場に一番お金を持ってきてくれているのは海外投資家なんですよ。
ネットで「大口投資家」「機関投資家(金融機関のことです)」「巨額の資金を動かすファンドマネージャー」と言われているのは法人の中に入ります。

大口投資家や機関投資家が相場を決める
大口投資家や機関投資家の動向を知れば勝てる!
だから個人投資家が自分で勉強しても勝てっこない!

ネットで見かける決り文句ですが、実はそ売買シェアは2020年で見た場合 7.8%なんですよ。
(それでもこの年はまあまあ高いほうです。その理由はあとでお話しします)
大半は個人と海外投資家。これで 91.5 %です。

もうお気づきですよね?
市場を動かしているのは誰なのか。
「個人が大口投資家に勝てるわけがない」は本当なのかどうか。

結論は、海外投資家の動向を注意して見る必要があるということですね

では、この表にある数字をどう考えるか、つまりどのプレーヤーがどんな動きをしたのかについてお話ししますね。
まずなぜ私が2020年の表を選んだのか、です。
2020年というのは、 3月に日経平均がコロナの影響で急落して安値16,552円83銭をつけ、その後持ち直して12月に27,568円15銭の高値をつけるまで、約11,000円、率にして65%以上上昇した年です。

この上昇過程で各プレーヤーがどんな動きをしたのか、一番右の「差し引き」を見てみましょう。
最初に気をつけていただきたいことは、2020年のような株価の急上昇局面と、株価が比較的落ち着いている時期、株価が下落を続けている時期とでは、同じ数字でも解釈が変わってくるということ。
これは覚えておいてくださいね。

・法人 2,178億円の買い越し(買いのほうが売りよりも多いときこういいます)
・個人 約1兆2,000億円の売り越し(売りのほうが買いよりも多いときこういいます)
・海外投資家 約3兆2,500億円の売り越し

個別では
投資信託、生損保、普通銀行が総じて売り越し
事業法人、信託銀行が買い越し。

私がここから想像できるストーリーを考えてみます。

・日経平均は16,552円83銭円から約9ヶ月で27,568円15銭まで約11,000円の急上昇
・個人投資家は下がっていた株も買値を回復、「ほぼ何を買っても儲かる」状態に。
儲けて売る → 買った金額よりも売った金額よりも大きくなる → 統計上売り越しになる。個人の方は結構儲かったんですね。
・海外投資家も個人と同様。株価上昇局面で3兆円以上の売り越し → ガッポガッポ儲かった?
・投資信託も株価上昇上昇 → 個人や企業が利益確定で解約 → 運用している株を売却するので売り越し。
・生損保、普通銀行 → 年金や保険金、自己資金の運用順調 → 高値で利益確定売り → 売り越し。
・事業法人 → コロナで業績ズタズタ → 株価好調,株の利益で本業不信を穴埋め(ひゃ〜助かった!) → 運用枠拡大 → 株式投資の資金枠拡大 → 買い越し

ってことになるでしょうか。

さて…
信託銀行と自己をスルーしましたよね。
ワケをお話ししましょう。

信託銀行も個人や企業から預かったお金を運用しますので、ほかの金融機関と同じように売り越しになるはずですよね。
でも買い越しになっている。
自己も5兆円の買い越し。 「宵越しの金は持たない(買った株は次の日に持ち越さず、損しててもその日に売り切る)」と言われる自己部門がなぜこんな大量に…

日銀はこの年、ETFを5.2兆円買入れしました。
ETFの買入れは信託銀行を通じて行われます。

ゆえに他の金融機関が売り越しの中でも信託銀行が買い越しになったと推定できるわけです。

またETFのために証券会社はETF構成銘柄を市場から買い集めないといけません。
日銀が5.2兆円ETF買入れ → 自己が5兆円買い越し

関連はある、と私は推測しています。

さて、これはあくまでも過去の分析に過ぎません。
使い方としては、発表される投資部門別売買状況を毎週チェックした上で、

・下げ局面で海外投資家が買い越し → 先の上昇に備えて安い値段で買い始めている、と推測。
・上げ局面で海外投資家が買い越し → 株価上昇がまだ続くだろう、と推測。
・市場全体あまり動いていない状態で海外投資家が大幅買い越し → そろそろ上昇が始まるのでは、と推測。

その後に、チャートを見てタイミングを計る、という流れでいいと思います。

さて、いかがでしたか?
投資部門別売買状況、誰も教えていませんが、毎週こっそり見てくださいね。

 

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